© Wataru Yamamoto

山本 渉Wataru Yamamotoシリーズ「光の葉」

自己と事物や時間などとの関係によって変化し続ける人間の精神的なイメージとしての自然の記録を試みる。都市に生きる現代人にとっての自然の考察や、写真というメディアによる自然表象の方法を研究し、多様な自然という言葉の意味を紐解き記録することを主題としているが、全ての仕事に共通しているのは近代的な人間(人工)の対概念としての自然を対象とせず、人間と自然との関わりの中に見出される現象の記録を行っていることである。

つまり私は自然でも人間でもなくその間(あいだ)の記録を試みる。このようなイメージの記録を行うために写真技術を用いるのは写真の持つ本来的なあいまいさ―「Photo-graph(光を-描く)」でありながら「写-真(真を-写す)」という、光学的でありながら精神的な表象技術のためである。あいまいなものを記録することは可能なのか。

「光の葉」では、かつて植物のオーラの観察に用いられたキルリアン写真の実験を行った。キルリアン写真とは、対象物に高周波・高電圧をかけて発生させたコロナ放電による発光現象、すなわち対象物から発散する水蒸気の電離・発光現象をフィルムや印画紙に感光させたものである。カメラやレンズを使用せずに対象物を写すことと、その魅惑的なイメージの力によって神秘的な意味でのオーラという言葉が定着したが、実際には対象物の厚みや水分量、実験環境等の差異によって得られるイメージが変化する。そこには視覚的な写実性とは別の物質的な写実性があり、作業の痕跡が記録されるのである。この作品では、キルリアン写真の作家たちがおそらく失敗と見なしてきたであろう画像を選んで見せている。極めて人為的に作られた自然の形象としてのキルリアン写真。その失敗によりできた不完全な自然のイメージに眼を向ける事で自然物と人工物との交点を探り、人の抱く自然のイメージに眼を向けてみたい。

1986
栃木県生まれ
2011
「キヤノン写真新世紀 2011」佳作
2013
多摩美術大学大学院博士前期課程修了