© Yumiko Utsu

うつ ゆみこYumiko Utsu「はこぶねのそと」

私は“はこぶねのそと”というシリーズを2006年頃から撮っている。ノアの方舟に乗れなかったり、乗らなかったりしたいきものや人々が残った世界は、どんなにか多様性に満ちて、複雑で混沌としていただろうと想像しながら、変てこないきものや状況を作って撮っている。ノアたちが舟から出て、もうどれくらい経ったのだろうか。世界は神を裏切るかのようなしたたかさで、美しく奇妙ないきものや人々で溢れ返っている。そしてそれは生まれては消えていく。私は今在るそれらの美しさ、合理性、おかしみを噛みしめたい。人類の活動がもたらした温暖化やその他の影響で、私が生きている間にも、地球上から様々ないきもの、そして沢山の人々や文化が姿を消すのを目撃することになるだろう。皆が、今ここにあるものやことを当たり前と思わず、有り難いと感じ、大切にするにはどうしたら良いだろうと考えている。私は色々なものを、当たり前に見える環境から切り離して、違和感の生じる状況に置き、人々にそのもの存在の美しさ、面白さ、そして世界の豊かさをあらためて考えてもらう助けに少しでもなれば、と思い作品を作っている。

1978
東京都生まれ
1997
早稲田大学第一文学部入学
2001
同大学中退
2006
第26回写真「ひとつぼ展」グランプリ